遠き日の言葉
遠い昔、
「あなたは悲しみに出会うことで成長する」
と私に言った人がいた。
まだ若かった私にとって、
その言葉は呪いのように聞こえた。
あなたはこれから、
多くの悲しみに出会っていくのよ。
楽しいことなんてそれほどないけど、
頑張りなさい__
__そんな風に言われたと思ったからだ。
でも、今ならその意味がわかる気がする。
悲しみは、私を成長させる。
悲しみが、私にとってキーなのだ。
でも、それは落ち込むことではなかった。
なぜなら、悲しみは、
そこに大切なもの、
好きなものが存在すればこそ、
感じることができる感情だからだ。
大切なものや好きなもの、
失いたくないもの、
失ってもなお大切に思えるものに
私はたくさん出会ってきたのだ。
今も胸は痛い。
それでもやはり、
その感情を産み出したものに
出会えたことに喜びを感じる。
いつかは離れていくとわかっていながら
その出会いを大事に思える。
傷つくことに慣れることはなくて、
いつも痛みはつらいけれど、
それでも傷つくことは怖くない。
私は悲しみさえも、
いとおしい。
それが生きている痛みだから。
うまくいかないこと、
すれ違うこともある。
でも、何度でも帰る
変わらない場所がある。
小さい頃からずっと
私のなかにある青い世界。
そこで落ち着いて、
ちゃんと悲しみに向き合って、
また、光の世界へと出かけていく。
絶えず移動していく。
止まれない時間の中を生きるから、
変わらないことはできなくて、
別れ行くこともある。
だけど、長い時間の向こうで
また再会することもあるんだ。
そして、遠い昔の思い出を話すとき、
時間を共有した素晴らしさを知る。
最近、出会ったひとたちとも、
共有する思い出がすでにあることに、
泣きそうになった。
そうやって、
人と出会って、
離れたり、
また近づいたり・・・
悲しみの手前にも、
悲しみの彼方にも、
いとおしい人たちがいる。
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